『わが恋わが歌』と鎌倉アカデミア



わが恋わが歌 (1969/日)

製作:江夏浩一 / 武藤三郎
監督:中村登
脚本:廣澤榮
原作:吉野秀雄 / 山口瞳 / 吉野壮児
撮影:竹村博
美術:梅田千代夫
音 楽:いずみたく
出演:中村勘三郎 / 岩下志麻 / 竹脇無我 / 中村賀津雄 /
八千草薫 / 北林早苗 / アンナ・ルーセン /
緒形拳 / 沢村貞子 / 三木のり平


未見の映画です。
Twitterでmakotochandesuさんに教えていただきました。
山口瞳宅と鎌倉アカデミアが登場するそうです。
簡単な解説はgoo映画にあります。
「吉野秀雄の随筆集『やわらかな心』、山口瞳の『小説・吉野秀雄先生』、吉野の次男壮児が著した『歌びとの家』を原作に」とありますが、3冊の本が原作ですから、おそらく歌人吉野秀雄の実話が基になっているのでしょう。

吉野秀雄は毎年7月に鎌倉市の瑞泉寺で「艸心忌」 が開かれています。
「艸心忌-吉野秀雄を偲ぶ文学忌」
山口瞳は「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」で有名なサントリー興隆期のコピーライターであり、岡本喜八監督、小林桂樹主演で映画になった『江分利満氏の優雅な生活』の作家ですね。

吉野秀雄は鎌倉アカデミアの教師で、山口瞳は生徒でした。
鎌倉アカデミアの映画科には鈴木清順も在籍していますが、映画科は校舎が材木座の光明寺から大船(現在の横浜市栄区)へ移転したときに出来たといいますから、鈴木清順は光明寺の校舎では学んでいないのでしょう。

2006年に光明寺の本堂で鈴木清順監督の『オペレッタ狸御殿』が上映されました。
鎌倉アカデミア60周年の記念行事+プレアデス国際短編映画祭のプレイベントです。
この映画にはCGによる美空ひばりの観音様が登場します。
残念ながら清順監督は来場されませんでしたが、光明寺本堂で黄金色に光る阿弥陀如来様や弁財天様や観音様の横で「デジタル美空ひばり観音様」を拝むと、スクリーンと現実の境界が曖昧になるような面白い体験でした。
狸と色恋の映画を上映した光明寺さんの懐の深さが伺えます。
オペレッタ狸御殿 予告編(Youtube)

話は逸れますが松岡正剛の千夜千冊『文化の仕掛人』 には鎌倉アカデミアや草月ホールをはじめ「ありとあらゆる前衛と教育活動とメディア文化が噴き出した。」1946年(鎌倉アカデミアの前身鎌倉大学校創立)から1960年代の「文化装置」について書かれています。

最後の部分だけ引用します。
すべての起爆は何度にもわたる下からの個々の連動によるモチベーションで動いていたということ、それに、ほとんどのアクティビティがコマーシャリズムや広 告やその手の業界人を介入させていなかったということである。もうひとつ言うのなら、本書に登場する文化装置には消費者を対象としたものがまったくなかっ たということだ。
その後、日本はくだらぬ相手をふやしたものである。池波正太郎が愕然とした若者市場だけではない。主婦市場、タレント市場、お笑い市場、グルメ市場、健康市場‥‥。これはひょっとすると取り返しがつかない泥沼である。もはやこういうと きは「最小多様性」なるものをめざし、無数の「小あがり」を各地の縁側あたりに意匠させるしかないのではあるまいか。
松岡正剛の千夜千冊『文化 の仕掛人』http://1000ya.isis.ne.jp/0766.html


このサイトも無数の「小あがり」のひとつにでもなれればと思います。
鎌倉アカデミアについてはまた別な機会にも書きます。
『わが恋わが歌』はときどき上映されるようですので是非一度見たいと思います。

(写真:光明寺/鎌倉アカデミア碑/オペレッタ狸御殿ポスター)


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